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子供時代は足が早いとヒーロー遅いとクズ扱いだった話~前半~

小学生の世界においては「足が速いだけで人気者」だ

この事実はどの世代の誰もが納得するだろう

 

だがその光輝く舞台裏の真っ暗い泥の中で

「足が遅いやつはクズ扱いしたってかまわない」

という決して許すことのできない空気に苦しむ、足の遅い子供たちの戦いがあったことを俺の子供時代のエピソードを交えながら、子供時代に足の速い人気者だった大人たちに数十年越しに叩きつけてやろうと思う。この野郎めが。

 

ドンソクだった子供時代

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僕、たつみそうきちは小学生時代

とても足が遅い子供でした

その遅さは尋常ではありませんでした

 

「現在の陸上界で足の速い人は?」

こう聞かれたらきっと陸上やスポーツに興味のない人でも

「桐生選手」と答えられるでしょう

なぜなら彼はただ早いのではなく「抜群に早い」からです

 

その真逆で僕は「抜群に遅い子」でした

 

運動会でも集団から一人だけ数メートル離れて走る遅さだったので「足の遅い子」として1位の子よりも目立つほどでした

 

父兄の席から聞こえてきた

「アハハ!あの子、ずいぶん遅いね!」は

一生忘れません

あのくそ婆が。

迫りくるマラソン大会

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小学生時代の運動系の思い出の中で強烈なことがあります

強烈過ぎてこれ以外、全く覚えていません

 

それは5年生のマラソン大会の時のことです

 

 

数週間前から憂鬱でした

 

こういう運動系のイベントがあるとクラスで俊足ランキング上位の人たちの中で

「お前には負けないぜ」

「ふっ こっちこそ・・・」

などの青春マンガ的なやり取りがあると思います

ドンソクチームの陰の戦い

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ここで声を大にして言いたい!

俊足チームの陰に隠れてドンソク(鈍足)ランキング上位の人たちの中でも全く同じやり取りがあるのです!

 

「あいつよりは遅くないはずだ・・・負けられん・・・」

「あいつよりは早いと思うけどどうだろう・・・ビリだけは避けたい・・・」

この青春マンガ、絶対売れませんね

 

 

鈍足ランキング上位の子供にも戦いがあったのです

 

そう

それは「足が遅い」とただでさえ普段から馬鹿にされるうえに

「マラソン大会でビリだった」という不名誉なトロフィーを授けられてしまうかもしれないという戦いが!

 

こうなると最悪です

最低でも次の大きな運動系イベントでその鈍足トロフィーを誰かにバトンパスしない限り、ずっとそのクラス中からの嘲笑は続くのです

 

クラスのイケてる系の奴に笑われるのはもちろん、ちょっと気になるあの子にも笑われます。

席替えで鈍足チームが隣同士になったら「鈍足セット」などと名付けられることは必至です

 

 

そもそもなぜマラソン大会なんてあるんでしょう

 

僕は僕の足が遅い事を知っています

それでも懸命に生きています

 

なのに勝手にマラソン大会なるイベントを開催され強制的に参加させられ、年に一度

「足が遅いのはこの人です」と大々的に公表される

 

とんでもない人権侵害です

子供にもプライドがあるのです

 

俊足たちは1位になれなくても人間ですが鈍足たちはビリになった瞬間にクズ扱いです

いわば生存競争です

俊足たちとは背負ってるものが違うのです

 

だからこそ、このマラソン大会前のドンソクたちの声にも出さないこのやり取りの真剣度は、非常に高かったのです

 

いわば生贄の選別だったのだから。

ささやかれる噂

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大会が近づくにつれてある噂が経ちました

 

それはとなりのクラスの数名が

「マラソン大会だるいからリタイヤしようぜ」

と話しているという噂です

 

人口の9割が昭和生まれの時代でしたがこういう卑怯なことをする奴らはあの時代にも一定数いました

 

いくら鈍足の僕でも「逃げる」という発想はなかったのでその噂を聞いた時、とても軽蔑する気持ちを抱いたのを覚えています

(事実、鈍足チームの誰一人リタイヤも欠席もせずに参加しました)

それと同時に怖い気持ちが薄まりました。

「ビリかもしれないけど逃げはしないんだ俺は。」と。

足を震わせた大会当日

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大会当日です

 

心臓はバクバクで前日からろくに寝ていません

今日の午後にはクズになるか逃れるのかが決まるのです

全校行事なのでドンソク王になれば下級生にすら馬鹿にされるかもしれません

 

 

マラソン大会は1年生から6年生まで順番に行われます

 

全校生徒が校庭で見守る中一斉に走り出し、校門を出て町内を走りまた校門から戻ってゴールです

スタートもゴールも校庭なので各学年の誰がトップで誰がビリなのか全員に知れ渡るのです

大人は本当に残酷です

 

 

 

校庭を二周ほど走るだけの1年生が終わり、2年生がスタートしました

 

 

続々と校門をくぐって戻ってくる二年生たち

 

最初に入ってきた子供がトップなのは誰の目にも明らかです

「あー〇〇君のお兄ちゃん1位だーすごーい」

などと聞こえます

足が速いとその家族までヒーロー扱いです

身分制度が確実に子供時代は存在したのです!

 

ですが鈍足チームにも救いはありました

2年生以上の学年はスタートしたあと一度校外に出てしまうので、誰がビリなのかは結構あいまいなまま終わるのです

 

校門から入ってくる人が少なくなってきたな?

そう思ったあたりで

先生「では次の学年のみなさんはスタート地点に・・・」

という放送を聞いて初めて

「あ さっきのがビリだったんだ。誰だったっけ?」

というわけです

 

そのため、僕ら鈍足チームは

「もしビリになったらゴールのあと、全校生徒にビリだと気付かれる前に自分のクラスの待機場所に戻って紛れてしまえば、バレにくい!!」

と情けない作戦を立てていました

 

ですがこの年はひとつだけ、それまでとは違う事がありました



最悪の新事実

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それは2年生を見学してるときに分かりました

 

次々とゴールしていく二年生たち

全校生徒がトップの子を見送った後、「誰がビリなのか」に興味が移っていた時のことです

 

全身真緑のジャージを身にまとった大人が一人の子供に伴走しているではありませんか!

 

その真緑のジャージの先生は新任の男の先生で、その年大学を出たばかりでした

 

真緑と子供がゴールしたと同時に

「次の学年はスタート地点に・・・」と放送されたことで「真緑のジャージがついてる子供がビリ」全校生徒に知れ渡ってしまったのです

 

次の3年生の時もビリの子にその先生が伴走していたので

真緑=ビリ

なのが確実であることは明白でした

 

「あー じゃああいつがビリだー!ギャハハハ!!」

などと数百人に笑われながらゴールする

ビリっこ達

 

ただただうつむいて耐えています

あれは数十分後の僕かもしれない。そう思うとまた腹痛がひどくなりそうでした。

なんてことをしてくれたんだ学校は。

力づけてるつもりなのか?

それとも新任教師の教育の一環のつもりなのか?

なんにせよ最悪でした

ビリであることが大々的にバレることは避けられるかもしれないという鈍足チーム唯一の希望の糸は、ばっつりと真緑のはさみで切られてしまったのです

ゼッタイにビリにはなれない

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鈍足チームの一人、掛け算はできるけど足し算ができないT君も事の重大さを分かっていたようでした

顔面が蒙古斑色です

 

きっとT君の目に映る僕の顔色も同じだったでしょう

 

二人の合った視線は、お互いが同じくこう語っていました

「普段は鈍足仲間だが、こうなったら非情に行くしかない。今日は完全な敵だぞ」

と。

 

自分の足が自分のモノでないかのような感覚で、地面ばかり見ながら絶望と根性のはざまで戦って順番を待っていました

先生「5年生はスタート地点に並んでください」

罠にはめられた!

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パーンとスタートのピストルがなります

 

誰もがスタート直後はダッシュします

なぜならこれも全校生徒が見ているからです

「スタートの直後、ビリだった」という

もはや言いがかりのようなレッテルも存在するのです

 

それでも「ビリだった」より「最初から最後までビリだった」の方が嫌です

 

そして必死に人の波をクロールするように全校生の目から逃れられる校門を目指しました

 

 

校門を出て町に出ると俊足チームはもう見えません

中間チームは背中が何人か見えています

 

自分が何位なのかはわかりませんが僕はビリではありませんでした

校門を出るときに後ろに数名いたのを覚えていたからです

 

「良かった。ひとまずビリじゃないし例え抜かれても何人かいたから一人に抜かれたらスピードアップすれば後ろに確実に一人はいるんだからビリは免れる」

そう思っていました

 

ビリではない

その安堵から自分より遅いのは誰だろうと興味がわき、後ろを振り返ってみました

 

すると数十メートル後ろで生徒の安全のためにところどころに待機している一人の先生の前に、走っているはずの数名の生徒が立ち止まって何かを訴えているのです

「あれ?なんで走ってないんだ?」

 

 

勘の良い方は気づいたかもしれません

 

そうです

大会をリタイヤしようと画策していた隣のクラスの奴らがリタイヤを訴えてたのです

つまり僕の後ろを走っていた数名というのは、全員そいつらだったのです

せまりくる真緑ジャージ

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「なんて卑怯な奴らだ・・・リタイヤって不参加じゃなく途中リタイヤの事だったのか・・・」

ショックと軽蔑で頭が混乱しながらも走らなくてはと奴らに怒りを覚えながら前を振り返ると、あの真緑の先生が視界に入りました

 

そしてあろうことか僕めがけてゆっくりと近づいてくるではありませんか

そうです

リタイヤした後ろの奴らを除くと自動的に僕がビリになっていたのです

 

僕の後ろにはリタイヤ組以外はいなかったようです

ほんとに足遅かったんです僕。

残酷な刃

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僕は必死で

「ビリは俺じゃない!リタイヤしたあいつらだ!来るなああああああ!!!」と

叫んでました。

 

 

心中で。

 

爪が伸びてるというだけで靴で子供の顔面を教師が殴る時代です

先生相手にこんなこと言えるわけがありません

 

慣れた様子でスっと僕の伴走を始めるマミドリアン

そりゃ5回目だからな。

 

 

最悪です

もう学校で安息の場所は僕にはありません

明日から毎日40度出ればいいのに。

 

 

 

「あっ たつみさんとこの、そうきちくんじゃないの!」

 

道路に出て応援している学校近くのお店に勤めるエプロンを付けたままのおばさんの声が僕の耳に届きました

 

無視しました

「ビリでもあきらめないで~」

という声はしっかりと心にささり、貫通しました

 

マミドリアンもちょいちょい

「参加することに意義が・・」とか言ってきます

刺したい

せまりくる校門

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「いやだビリじゃない違うあいつ等許さん」

般若信教のようにブツブツ唱えながら途中何度かマミドリアンをまこうとダッシュしますが

焼石に水、修三にパリピ

まったく効果がありません

 

 

そうこうしてるうちに校門が近づいてきます

もはやあの校門はギロチンにしか見えません

 

終わった・・・なにもかも・・・

次回予告

え!?T君が!?ま、マミドリアーーーン!!

次回「正義は勝てなくても報われる。そして悪は滅びる」

書きました。後編です

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